旅もしたいし恋もしたい、男としての本能を認めたら楽になれた話

旅もしたいし恋もしたい、男としての本能を認めたら楽になれた話

少なくとも5年は旅が終わらない。日本に帰らないかもしれない。自転車で世界一周をする。そんな未来は決定していた。まだ、15歳だった。

中学になって異性を意識するようになった。思春期。いや、自慰行為を覚えたからかもしれない。ともかく、女子と話せなくなっていた。好きな子を前にするとなお更だった。目を合わせられない。言葉が出てこない。高校に入ってもあまり変わらなかった。唯一、バイト先ではおしゃべりになれた。それでも誰かと付き合うことはなかった。

そもそも旅と恋の両立が考えられなかった。自転車世界一周を始めたら数年は日本に帰ってこない。2人でいることなんて想像できなかった。

でも、地元の友人は「え、別に待ってもらえばいいじゃん」とけろっとした顔で言う。「恋愛なんて自由じゃん、2人で考えたらいいだけの話」という友人の言葉が新鮮だった。凝り固まった頭の中を爽やかな風が駆け抜ける。人を変えるのは人だった。

だから、旅前は恋愛にも積極的だった。その頃には、異性の前であがることもなくなっていた。女の子を誘ってご飯も食べに行った。告白もしてみた。だが、うまくいかない。どうしても相手任せになってしまう。本人ですら不安でいっぱい。待ってもらうなんてかなりの無理ゲー。頑なに童貞を貫く。

そのままま、オーストラリアから世界一周の旅が始まる。だが、いかんせん日々走ることで精一杯。恋愛する余裕など無かった。湖畔で音楽を聞いていた。自分とは縁のない恋愛ソングに胸が苦しくなった。ずっと一人。そして一人で死ぬかもしれない。涙が止まらなくなった。

 

それでも旅は進む。

オーストラリア西部の大都市パースまでたどり着いた。ここで、信じられないことが起きた。ホステルに台湾の女の子がいた。彼女たちから「スゴイイ」「かっこいい」「あなたは私のヒーロー」とチヤホヤされる。台湾で自転車旅行がブームのようだった。だから「自転車で一緒に走ってみたい」という女性も現れた。綺麗系の年上お姉さん。あくまで彼女の興味は自転車旅。私ではない。でも、同じ時間を一緒に過ごす。そこで恋が芽生えたら・・・。童貞卒業。想像ばかり膨らむ。だが、その頃はまだ青かった。初心者を連れて旅をする余裕なんてない。次の街まで1200kmというナラボー平原という難所もあった。「いいよ」なんて簡単に言えなかった。

でも、収穫だった。恋愛でなくも手の届く距離に女性がいたかもしれない未来。これからの励みとなる。

また、パースではこんなこともあった。街を自転車でさまよっていると「日本の方ですか」と声をかけられた。日本人の女性だった。歳も近かった。オーストラリア人の彼氏と待ち合わせだそう。ちょっとだけおしゃべりする。黒髪が胸の近くまで伸びていた。お化粧もしていて頬がチークで薄っすピンクに染まる。ノースリーブから伸びた二の腕はプニプニしていて柔らかそう。異性を意識していた。女性が好きで好きで好きで仕方ない私がいた。恥ずかしいことなんて何一つ無い。私は女性と仲良くしたいのだ。そんな生まれながらの本能を認めると楽になれた。

 

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