みかんが満月になった日

みかんが満月になった日

月が好きだ。
夜空に輝く満月も好きだし、闇夜を切り裂く三日月も好きだ。

月岡芳年の「月百姿」は浮世絵の最高傑作集だと思っている。
月を題材にした百枚の絵。それぞれ違った画風、ストーリー、技法、どれも素晴らしい。
浜松市美術館は全部持ってるくせになかなか展示してくれない。けち!けち!
常設展示してくれれば、満月の日には行くのに。
けち!けち!

 

月の話で有名なとこでいえば夏目漱石が「I love you 」を「月が綺麗ですね」と訳した逸話。
ほんとかどうかは知らないが、この話を知ってからしばらくは、
とりあえず女性に「月が綺麗ですね」って言っていた気がする。
俺に「月が綺麗ですね」と言われたら察してください。

 

 

昨年末の話

正月も近づく師走に、みかん狩りの手伝いをしていた。
朝から夕方まで、ひたすらみかんを狩る日々。

 

そしたら、ある夜の満月がみかんに見えてきた。

年末。正月。鏡餅。

あぁ、鏡餅の上に満月が輝く写真が撮りたい。
満月鏡餅の写真が撮りたい。
そう俺が思うのは自然の流れだった。

 

 

鏡餅を百均で仕入れ、撮影前にまずは計算してみた。
月までの距離はおよそ約38万km。
そして月の直径は約3500km。
鏡餅の直径は約8cm。

 

久しぶりに連立方程式なんかを使い、餅と月のベストな位置関係を探った。

 

ふむふむ。
およそ5m先の餅と月を撮影すれば、ちょうどいいサイズ感になるのか。

と、事前準備は万全だったのだが、
なかなか上手くは行かなかった。

 

月の出入り時間。
暗くなり月が輝く時間には、すでに月がそこそこ上空にあるのだ。

自分と月の直線上に鏡餅を設置するのだが、5m先にちょうどいい場所が無い。
高い場所に餅を置けたとしても、餅を下から撮っても何かが違う。
月が沈み低い時は、建物が邪魔をしてくる。
月の角度と、餅の場所と、建物。
思ったよりも難しい。

そうこうしているうちに満月は終わり、正月が来た。
みかん狩りも終わり、俺の満月鏡餅の野望も消えていった。

 

 

 

 

 

 

「今日が平成最後の満月です」
と、テレビで女性アナウンサーで言っている。

これは満月鏡餅リベンジするしかあるまい。
正月でないが関係ない。
平成が終わり、令和が始まる。
正月みたいなものだ。
めでたいから鏡餅でいいのだ。

外に出て月を確認する。

月の角度も良い。
建物の邪魔も無い。
餅を置く場所もある。

いける。
俺はすぐさまカメラを準備した。

 

まずはオート設定で撮影。
月にピントを合わせれば、餅はボケる。
逆もまたしかり。

やっぱりオートじゃ無理だった。
カメラの設定をこれでもかといじる。

絞りはできるだけ絞って。
なんせ5mと38万km先の物を同時に撮るのだ。
ボケ効果など要らぬ。

ISOは400くらいで。

そしてシャッター速度を調節して、全力フラッシュ。

 

場所を変え、設定を変え、何枚も何枚も撮影した。

 

やっとなんとかそれなりのが撮れた気がする。
俺にはこれが精いっぱい。
もう満足。
これで思い残すことなく令和を迎えられる。


(トリミングしてます)

 

俺の月百姿、記念すべき1枚目。

あと99枚。どんなのを撮ろうか。

 

 

今宵も月が綺麗でありますように。

 

おしまい

 

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