克服する
- 2019.07.04
- としちゃん

人には必ず苦手なものがあると思う。苦手の生き物がいると思う。
僕はクモが苦手だった。今もまだ種類によっては苦手かも。
クモが嫌い・苦手になった理由は今でも鮮明に覚えている。
あれは小学1年とか2年の時(時間はうろ覚え)
その当時、我が家の男子トイレは外にあって、小便をしているときにアシナガバチ(おそらくフタモンアシナガバチ)に刺された。
ハチに刺され泣きわめいていると母親がやってきて「どうしたの~」ってなる。「ハチに刺されたよ~」って答えると母親は「ちょっと待ってて」と言って庭に飛び出した。僕のところに戻って来たときに母親の手にはジョロウグモが。クモのサイズはそれほど大きくなかったが…。それが問題ではない。
母親は、僕の腕をおもむろに掴み、ハチに刺された患部にそのクモを押し付けすり潰したんだ!その時に母親が僕に説明してくれた言葉がこれ!
「ハチは8、クモは9 クモのほうが勝つからこれで治る」と未だに理解ができない言葉を覚えている。悪魔の呪文でしかない。こうやって幼少期にクモが嫌いになった。
虫が大好きな少年が行く先には必ずクモが存在する。クモは嫌だが虫は捕りたい。いつも葛藤した。つかまえた虫を図鑑で調べる。しかし、昆虫図鑑の最後のほうには必ずクモのページがある。クモのイラストも写真も見ることができなかった。昆虫図鑑の最後のほうのページは拷問でしかなかった。
そんな少年が大人になり、自然にかかわる仕事をするようになる。山に出かけても、川に出かけても野原に出かけても必ずクモはいる。出会う。しかも、嫌いなものってセンサーが働くのかすぐに察知し、クモを見つける。
ある日のことイベントでクモの糸の強さを体感するためにクモの糸で作ったポイで金魚すくいをすることになった。秋の大きく成長したジョロウグモの巣を使ってポイを作る。子供にジョロウグモを近づけられた時は失神しそうだったことを覚えている。
自然を相手に仕事をしているのにこのままではいけないと思い始めた。そんな時にちょうど知り合いの学芸員がいる岐阜県博物館でクモ研究会というものが発足された。博物館周辺の公園内のクモを調査するというもので参加することを決意した。
意を決したのは2013年4月のこと
目には目を歯には歯を ということで強制的に
メンバーは5人未満と少人数だがクモに詳しい人たちが集まる。私だけがクモが嫌い、見ることも触ることもできない。1回目の活動の自己紹介で「苦手なクモを克服するために参加しました」と言って暖かく迎え入れてもらったこともよく覚えている。
こんな自分は迷惑にしかならないかなぁ~なんて思っていたけど意外や意外。クモ嫌いセンサー発動でクモをバンバン見つけた。もちろん触れないので見つけたら叫んでメンバーを呼ぶことしかできなかったが…。
これを3年続けたころある程度の種類は捕獲できるようになったし、図鑑も平気になった。今ではクモ研究会の中心になりつつある。未だにコガネグモやジョロウグモは苦手だがほぼ克服できた。
メンバーは年配がほとんどで顕微鏡などの作業は全て任せられる。クモの同定は、顕微鏡で雌の外雌器(生殖器)の形の違いを見る。たまに牙の形で同定することもある。

図鑑を見ることも、生体を触ることもできなかったことが嘘のようとは大袈裟だが顕微鏡でクモをじっくり観察する日が来るなんて思いもしなかった。
ついつい長くなってしまった。最後にきれいなハエトリグモを紹介(閲覧注意かな?)クモが苦手な人は見ないでね!
ヒメカラスハエトリの♂
お付き合いありがとうございました。
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