屋久島 豪雨の記録3 {縄文杉コースについて}

屋久島 豪雨の記録3 {縄文杉コースについて}

先週書いた「警報発令でツアー催行中止」という決まりに関して以前、自称山岳救助の専門家という方から以下のツイートを貰った。
「裏を返せば警報が無ければ登山をして良い、ということになりますよね?」
いわば(青信号ならばどんな状況でも交差点に突っ込んで良いんですか?!)と揚げ足を取っているようなもんで、(クソリプってあるもんだなぁ) と無視した訳だが、意訳を持って捉えるならば「ツアー中止の基準が警報発令では基準として低すぎる」と言いたいのだろう。
「登山」と聞くだけで頭に浮かぶ景色は人それぞれあるのだろうが、縄文杉登山というのは実質かなり特異なものがあり、屋久島5月の豪雨災害に関して語る上で前提として理解されているべき事なので、今週はそれについて書いてみたい。

屋久島もちょくちょく遭難や行方不明の事案が発生する。多くの人の想像以上に広く、険しい地形を持った島なもので、見つかっていない不明者も相当数いたりする。
遭難時の天候にはあまり関係なく、見つかる人は沢筋に引っ掛かっていることが多い。道迷いの結果本能的に「下」を目指せば突破困難な滝や崖に必ず当たる。だから見つからない人は「引っかからなかった」可能性が高い。
“洋上アルプス”と呼ばれるだけに険しい側面もあり、しかし気候的には南の島なだけに本州の高所よりはかなり温暖となり、冬季以外は低体温による行動不能というのをあまり聞かない。{疲労や濡れによる二次的な低体温はそりゃぁあるだろう。}物理的に流される沢、というのが一番のリスクだ。
2015年には「軽いハイキング」というイメージがある白谷雲水峡で、増水した沢に流され一人が死亡している。{https://www.asahi.com/articles/ASH7S7J3FH7STLTB01S.html}

縄文杉コースはどうなのか?
「増水したら流されかねる、避けようのない渡渉点」というのが思えば意外なのだが 本来ほぼ無い→※。
縄文杉コースはそもそも多くの人が頭に思い浮かべる登山とは結構事情が違い、そもそも頂上を目指していない{最高地点の縄文杉で標高1300m}。小杉谷という屋久島最大の谷間を歩き一切樹林帯を抜ける事は無い。雨風の勢いは稜線上とは比べるまでもなく、落雷のリスクも比較すれば格段に低い。
今までの事故事例を思い返しても「流された」死人はおらず、普段運動すらしない人が突然「健脚向け登山」に来るからか、心筋梗塞や脳梗塞が一番の死亡要因だ。

→※テレビで5月の豪雨災害を目にした人は「嘘だ」と思ったかもしれない。滝の様になった場所を登山者がくぐる衝撃的な映像が放送された。
あそこは我々ガイドの中では「水ポタ」と呼ばれ、地形上 登山道となっている森林軌道上に直接水がふり注いでしまう為、それを避けるための庇が備えられている。
そしてその庇の老朽化により、常々水がポタポタ落ちてきているから「水ポタ」。で、その庇の状態が近年どんどん悪化しており、本来はあそこまでひどく水が落ちてくる場所では無かった
↓ここ。あの報道もあって屋久島は来訪者が激減したもんで、あの日の写真はもう出さない。

またもう少し事情を書かないといけないだろうか。
この縄文杉11キロ中8.5キロの「トロッコ道」とは、そもそも森林伐採の為に作られた「森林軌道」だ。そもそも“林業の為の作業道”であった道を“登山道”として利用し始めた経緯がある。トイレの汲み取り等の為に今もトロッコが走りはするが、林野庁としては2016年に森林軌道として廃線{http://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/eizou/pdf/0131rosenichiran.pdf}という扱いになっている。
これは恐らくだが、作業道として林野庁が補修していた道が、鹿児島県が管理責任を負う純粋なる登山道、となったのだ。
しかし小泉純一郎「骨太の改革」以降色々金のかかる事が丸投げされている地方行政としては先立つものが無いのだろうか。我々ガイド側としては再三補修を訴えてきたのだが、{町が一度ごまかし修理をしてくれた事はあったが}あの豪雨災害の後に及んでも全く動きが無いままだ。
県には申し訳ないが、もう大々的にコンクリート造りに作り直さないといけない時期が来てしまっている。

 

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