屋久島 豪雨の記録 5 {シャトルバス}

さてまだ前提のお話し。多くの人が思い浮かべる{登山}と違う状況を作っている前提が、あともうひとつ、シャトルバスだ。

一般的な縄文杉の日帰り登山をするには、早朝から荒川登山口を目指さなければいけない。まず屋久島第二の集落「安房」から曲がりくねった県道ヤクスギランド線を登り、標高900mまで登ったところで右折。今度は町道荒川線を標高600mまで下ると、トロッコ道が現れたそこが登山口だ。

毎年3月-11月のシャトルバス運行期間は この町道区間を一般車両通行止めとし、登山者は安房の屋久杉自然館前よりシャトルバスに乗るか、タクシー/チャーターバスを利用するかの二択となる。

バスの時刻は{事情により変化があるので要確認だが基本的に}朝屋久杉自然館を出るバスが4時40分から6時までの20分刻で5本。荒川登山口よりの下山は15時から18時まで30分刻みでの7本用意されている。

これはほぼ完全に「日帰りで縄文杉を目指す人」のみに向けたスケジュールであり、しかし実情利用者の殆どがそうなのだから仕方がない。

このシャトルバスは体制が始まって10年近くにもなるが、メリット/デメリット共に色々ある。話の脱線を防ぐためメリットは置いておこう、最大のデメリットは「自由が利かない」事だろう。

自分のいつものパターンとしては、5時40分のバスに乗り、6時半頃に登山口を歩き出す。天候等の状況が不穏で引き返すとしても 最終6時発のバスは6時35分頃登山口に到着、7時に折り返す。そのバスに乗って下山することも可能ではあるが、単純計算で出発後15分の猶予しかない。実質「登り優先」で次々登りが来る細い道を登りと同じペースで下る事は不可能であり、この手は全く使えない。

下山のバスはその8時間後/15時にしか来ない。タクシーは呼んで空車があれば40分程で来る。但し安房まで5000円程。お金の事を言うならばバスチケットは片道690円。お土産屋さん等で買う事もできるが、払い戻しは観光協会のみなので旅程に合わなければ払い戻せない人もいるだろう。加えてチケット購入の時に日帰りならば1000円{泊りならば2000円}の「環境保全協力金」も求められ、これは払い戻しされない。

しめて2380円{泊りなら3380円}+{5000円前後を人数で割り勘した額}を支払い、雨に濡れ得られた体験は「行けなかった。」となると ガイドとしてそれをお客様に押し付けるのには心苦しさが当然ある。

「登山口を出発してしまったらどうせ15時まで下山のバスは無いのだから、兎に角行って早く帰ろう」

落雷や怪我の様なある程度決定的なイベントでも無い限り「途中から引き返す」という事がなかなか選択肢に入りづらくなってしまう。

 

 

そして状況はすべてのお客様やガイドに同じというわけではない。結果豪雨となったあの日も、バスをチャーターしてきたグループはそのバスに乗って下山した。恐らくそのバスで代替案となる場所へ行った事だろう。体力に不安のあるお客様も諦めがつきやすい。それで帰った組もいる。

もちろん、そういった状況がどうであれガイドは惑わされる事無く正しい判断を下さないといけない、と体裁を言うのは簡単だ。しかし未来から振り返れば正解と不正解が奇麗に分かれて見えていても、その場には100%もゼロ%も絶対に無い確率だけがあり、その確率も数値化できる程分かりやすい物ではない。

10年前にシャトルバス化される以前、登山口に自分の車が停めてあり好きなように下山できた様な自由があったならば。それは今回洗い出され 未だ解決案の無い問題点だ。

 

あと警報発令でツアー中止という決まりがガイド内にあるという事を以前書いたが、このシャトルバスも警報発令で運休する。「上げた人は下ろさないといけない」道義的責任もあるので当然下山時までを見越して運行の可否を判断している。

それ以前に通行に危険が予見された場合 県道ヤクスギランド線もまた通行止めとなる。

今回被災した人は ガイドの顧客<シャトルバス利用者<県道ヤクスギランド線通行者 という順に増えていくのだが なぜ「ガイドのツアー催行基準」ばかりが問題視されたのかという点も腑に落ちない所ではある。

{責任のなすりあいの様に見えるから誰も声を大にしては言わないのだが・・。}

カンザキマキオ
2005年より屋久島にてガイドをしております。 沢登り/バイク乗り/楽器弾き/山登り/森林鉄道廃線探索 とかする時間を全部子供に吸い取られている三児の父。

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