屋久島 豪雨の記録 15 {トリアージそして}

屋久島 豪雨の記録 15 {トリアージそして}

車は屋久杉自然館に停めていたので、誰かが
「屋久杉自然館で下ろしてもらえますか?」
バスの運転手さんに言うと
「いや、とりあえず全員武道館にお連れするという事になっています」
「武道館。」
言われても何の事やら分からない。
頭には
BOOWY LIVE 【1986.7.2武道館】 IMAGE DOWN
「ライブハウス武道館へようこそ!」もしくは「光る玉ねぎ」
https://www.youtube.com/watch?v=194R3zrH_IQ
でもまぁ何でも良いけど何処?と思っていると

警察署だった。
いつも警察官が剣道の練習をしてる ちょっとした体育館があるのは何となく知っていたが。そんな風に情報が交錯しつつも、先に下山した私のお客様方はうちの会社の先輩方が車を出してお迎えに来てくれていて
「あとは任せといて」
と引き受けてくれて頼もしい限り。{そういえば改めてお礼言い忘れてるなぁ}

ともかく、バスを降りると「武道館」へ通され、中では見知った医療関係者の方々のトリアージを受ける。
「何処か痛いところないですか?体は冷えていませんか?」
「まぁ・・特には・・」
数週間前に蒸れて痒くなった下半身を見て貰った診療所の先生に質問を受けて、特に何も云う事もなく 気恥ずかしくただトリアージタグを受け取る。
症状が重い人ほど大きく切り取られるキリトリ線が付いている訳だが、自分の知る限り大半の人は一枚も切り取られなかった筈で、{このタグ再利用するんだろうか?}なんて思ってしまった。{今調べたら100枚3万円位みたいね。一枚300円}

トリアージが済み特に治療の要らない人は解放。そこにペットボトルの飲み物とバナナとお菓子が並べられていた。自分含めた100人程の人にはお弁当が行き渡らず、24時間以上殆ど食べていなかった。バナナを頂く。お菓子は屋久島観光センター{馬場製菓}の提供品であることが{自分はいつも目にしてるので}分かった。
観光センター社長は、商売相手として対峙すれば甘い所が一切無い、実際手ごわいビジネスマンなのだが、こういう災害時には惜しみの無い援助を出す。
やっぱり「偽善だろう」と穿った見方をされがちだけど あの場でそのお菓子が観光センター商品である事を分かる人は少ない。損得で出来るものでは無く、貰う立場になってみると骨身に染みた。

この、下山後全員が医師の診断を受けるという体制は 実際大した怪我人は居ない事も分かっていたのでオーバーと言えばそうなのだが、必要な時に向けて本当に医療関係者を集めて訓練をするのは難しい。大規模災害に向けたシミュレーションとして価値があったと思う。どこの誰が主導したのかは知らないが、頼りないイメージが強い屋久島行政が、ちゃんと体制整えられるんだな、と{偉そうながらも}感心した所でもある。

「武道館」を出て 嫁から迎えに行くという連絡があったので外に出た。
すぐにNokko{ex.REBECCA}似の女性記者からNHKですが、と声を掛けられる。

山では何か食べたんですか・・いえ今やっとこうしてバナナを食べてるんです旨いですよ・・

すると横からちょっとお話良いですか、とテレビ{民放}がやってきた。

「・・この度はですねぇ・・本当に、大変だったのではないかとお察しするのですが・・」

まるでお葬式中継の東海林のり子のような悲痛な声でインタビューされたので少し笑ってしまった。いくらかされた質問に普通に答えていた所、横からイラついたように別の若い男が質問を投げつけてきた。

 「今回は一歩間違えればトムラウシの惨事といった事態だった訳ですが、あなたはガイドとして反省等無いのでしょうか?!」

それを叫び終えると同時に下に向けていたテレビカメラをこちらに向けた。

は?こいつ何を言ってやがる?とっさに「トムラウシの事故報告書をあなたはちゃんと読みましたか?」その言葉がノドまで出た。しかし口を経過しなかったのは自分も斜め読みだったからだった。

とりあえずこいつは「ガイド」が「反省しております」と詫びる絵が欲しいのがありありと出ていた。面倒な事は抜きにして誰かが悪者として成敗される絵ヅラを売って儲けたい。その場で強烈に切り返す頭の回転速度が欲しかったが たじたじに、

「屋久島は・・トムラウシ程寒い場所では無いですからねぇ・・」

なんとも間抜けな返答をして終わり。それはのちのち思い返すたびに破壊衝動に駆られる事となる。

 

テレビが終わって さっきのNokkoが絡んできた。

「写真があれば見せて貰えませんか?その・・SDカードをお借りできれば・・」

と言ってきたのでカードを渡す。

いくらか質問に答えていると彼女の持つパソコン画面に転送中の絵が見えた。

「え?さっきのデータ コピーしてるんですか?!」

「あ、ハイ 駄目ですか?」

「見せてください」→全コピーOKな訳がない。今すぐ全部消せ、と言いたかったが 10m向こうに嫁が子供らと来て{心配してたよ}という表情でこっちを見ている。早く終わらせたい。

それまで自分もNHKの番組に出演させて貰ってきた中で、雇用の契約、保険の確認、街頭でインタビューをすれば再放送も含めて顔出しの合意等 ことごとく面倒なぐらいに全て書面で同意確認をとるディレクターの姿を見てきていた。流石NHK、そこまでするんだ、それがNHKの普通なんだと思ってしまっていた。
コピーした画像の中から使いたい画像を選んだら使用の同意書や契約書を交わし、それなしには使わない、使えない物だろうと思ってこのNokkoの無礼な行為を看過してしまった。

 

それがまた、後々にまで後悔を遺す大きな過ちとなってしまった。

 

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