屋久島 豪雨の記録 17{ハイエナども}

屋久島 豪雨の記録 17{ハイエナども}

なりゆき断食のお陰もあって、内視鏡検査では大変奇麗に腸の内壁が写っていたそうな。{麻酔みたいなのカマされてて記憶がない。上下二穴挿入}
検査結果は後日郵送ながら、基本的に完全な健康体らしく、普通に帰宅した。

荒川登山口までの道は当然通行不能により仕事のスケジュールは白紙化。といっても縄文杉に何としても行きたいという声はやはりあり、こういう事態の時のみ催行する「白谷越え」ツアーの催行に向けて会社は動いていた。
「白谷越え」とは白谷雲水峡{標高600m}から入山し 辻峠{979m}を超えてトロッコ道{720m}に降り、そして縄文杉{1300m}を目指すコース。
通常の日帰り縄文杉でも22キロあり、ただ縄文杉に行きさえすれば帰りは下り一辺倒なので まだ運動不足気味の人でもなんとかなっているが、「白谷超え」となると片道の間にひと山超える工程を挟む→往復3山超える訳で、普段からフルマラソン走ってるとか「それなりの身に覚え」が無い限りは基本的に「日帰りで行くべきではない」コースとなる。

 

しかし「十分な体力さえあれば」行ける。行ける人の可能性をむざむざ葬り去る訳にも行かないので、事務所としては相当しっかりと脅しをかけて、ふるいにかけて、行けそうな人のみを対象にツアー催行をするのだが。根本的に顧客の自己申告に頼らざるを得ないので「行ける、行けない」ではなく「行きたい」しか頭にない人が混ざり込む事はどうにも否めない。
普通 白谷雲水峡と縄文杉でそれぞれ一日の計2日必要な所を一日で済ませてしまえる、となれば時間を多く裂けない人にとっては無理があっても魅惑的なコースで、不安要素があるからこそガイドに出費もできる という側面もある。しかしガイドが居ようがが居まいが体力不足は埋まらない。{背負って貰おうとか、消耗品である僕らの膝軟骨に期待しないで欲しい}
まだせめて荒川登山口が使えたならばそっちに降りるというエスケープも効くが、そもそもその「通常コース」が不通なのに 被災したガイド本人が日も空けずに登山を“強行”する、という形は特に世間の注目を浴びているこのタイミングでは完璧にリスクの倍々ゲームだった。
会社に「しばらくお休みさせてください」と言うと、「ゆっくりお休みください」と暖かい返事が返ってきた。しばらくのち 複数の人から「落ち込んでるんだって?」と心配の連絡がきた。

 

家に帰ってまず、NHKへの苦情窓口を探してとにかく映像使用をやめるよう伝える。夜にはNokkoから電話があり、出回ってしまった物はどうしようもないので映像の使用料を求めたがその後の対応は上司から、という事となった。彼らの持つ問題点は以下だった。
〇映像の無断コピー{この点は看過した点が行為を認めた事になるだろうとNHKから突っ込まれる}
〇映像の無断使用
〇映像提供者として名前を出す許可をしていない{そもそも提供していない}が、SNSから名前を割り出し無断で使用した。
〇「一歩間違えればトムラウシ」発言のカメラマンもNHK{だったことが判明}。事実関係が明確でも無く、その不正確な状況を基に発言を引き出そうというインタビューも当然アウト。
〇半年以上たった今になって改めて分かってきた事もあるのだが、とにかく彼らは他者の映像・画像の権利に関しては「信じられないレベルで」いいかげんらしい。自分のツイッターにあげた画像も無断使用されていた。

 

テレビに流れた「水ポタ」の映像のインパクトは強かった。道路の復旧にめどが立たなかったのでツアーのキャンセルが相次いだのは仕方が無いとして。熊やハブのような危険生物も居ない屋久島はツアーのリスクが低い、と思っていた某大手旅行会社が 屋久島ツアーまるまる取り扱いをやめる事を決定した、という話が聞こえてきた。
「水ポタ」の映像は自分以外からもマスコミに提供されていた。だがやっぱりNHKは世間への影響が大きい。そして誰でもなくこの自分が、仲間と言える屋久島の観光業界に大きなダメージを与えてしまった・・これはかなりに自分を苦しめた。一時は本気でNHKを訴えてやるつもりで動いて事を大きくした。しかしその話が周囲に伝わると とりあえず止められた。
{裁判に勝ったとして金銭的に弁護士費用も回収できる話じゃない}
{NHKは弁護士強いぞ}
{何より家族にかかる負担が大きいぞ}
仕事も無い中 家で怒りを燻ぶらせながら暮らすのは自分自身にとって本当に負担だった。

元々テレビは見ないのだが、どうせクソな報道しかない。その後は目に入らない様避けていたが、SNS等ではやはりクソのような情報が飛び交う。
とにかく前日以前の天気予報を引き合いに豪雨予報の出ている中{自然を甘く見て}{利益優先で}ガイドが登山を決行した、という憶測の物語だ。問題が提起したい新聞屋、したり顔をしたい一般人、顔を売り、マスコミのご意見番にでもなりたい登山ガイド等。彼らの就職活動や自己主張は誰かを踏みつけないと為し得ない物なのだろうか。

6月に入り、色々な事がひと段落付き始めた頃 この時の救助に関わった関係機関に対し鹿児島県が感謝状を贈った。
我々現場にいたガイドが一番大きくリスクをとったが、結局の所要救助者という立場なので呼ばれない事は仕方がない。ただ、新聞記事で紹介された消防団長のコメントはこうだった。
「最悪の事態にならず、ホッとしている。登山をする際は、最新の気象状況を確認するなどして臨んでほしい」
  可能な限り最新の気象情報は当然確認した上で起きたんだけどね・・・恐らく、その一文を見る限り救助関係者、マスコミの中でもあの日起きた事を理解する人間は稀であり、我々の経験が生かされることも無いのだろう。
そして表彰している鹿児島県はそもそも「水ポタ」を直していてくれていれば、{最悪の事態}にあれだけ近づく事も無かった訳なのだが、半年以上経過した現在ですらも未だ修繕はなされていない{!}。

 

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