幻の「ヤクシマ」ヒメネズミ

幻の「ヤクシマ」ヒメネズミ

さて。
とりあえず屋久島は、「なんかすごい所」とされています。
けど何がスゴい?と聞かれると 最近は
「もののけ姫の~」
とか言っちゃったり。けど、それは逆。
スゴい所やからジブリ来たんやと。ジブリやからスゴい訳ちゃう。

で、コレが「ジブリ以前」だと「東洋のガラパゴス」{それ小笠原ちやうの?}なんてなキャッチフレーズもつけられて とにかく他に無い、他とは違う種の動植物がいて貴重なんです~って話が多かった。時代的にも「山野草ブーム」というのがあって、園芸目線で植物に対し興味を持つ人も今と比べて格段に多く、「固有種」と言えば有難がられたものだった。
そんな風にして色んな動植物の頭にヤクシマ〇〇・ヤク〇〇という名がついた何らかの“固有”の種名は 色んな場で繰り返し列挙されてきた。特に屋久島は植物相に比べ動物相が貧弱なもので、数少ない哺乳類の中でもこんなに固有がいるんです!と よく挙げられてきたのがこの種、ヤクシマヒメネズミなのね。



しかし。
もう4年位前かにネズミの研究者と話す機会があった時、ふと「固有亜種なんでしょ」と当然の基本の話と思って話していると
「いや、聞いた事無いですね」
「専門は分類より生態なんですが」
いやいや屋久島に来て研究している対象が固有亜種扱いかどうかなんて知ってない筈がない。
で検索してみると環境省の公文書{屋久島世界遺産地域管理計画2012年}にはバッチリ記載されていて、恐らくそういう文書を基にした文献で自分たちも勉強してきたと思う。
けど日本産ネズミの変異と種認識/1981 辺りの論文では「日本固有種であり亜種は存在しない」とすでになっている。

そもそも固有亜種とされたのっていつ?となると↑リンクした論文冒頭に書かれている通りシーボルトが日本滞在中に集めた標本をコンラート・ヤコブ・テミンクが分類、マルコム・プレイフェア・アンダーソン第11代ベッドフォード公爵ハーブランド・ラッセルの資金により集めた標本をオールドフィールド・トーマスが発表、記載した(1906)・・
これって完全に日本の生物学の黎明期そのまんまッスよねー
ちなみにそのトーマスのつけた学名はMicromys  geisha yakui ー芸者って。

ともかく。
どうやら半世紀ぐらいは昔に存在が否定された、研究の黎明期に記載の亜種が 未だに官公庁の資料に記載されていて、「官公庁資料は流石に間違いないだろう」と民間の資料に転載されて行き、ヤクシマヒメネズミという亡霊がいつまでも成仏できずにいるらしい。官公庁は官公庁で昔「専門家」に書いて貰った物を修正できる能力も暇も無い。
何か調べ事で参照する文献というのは、こんな特性も理解しておくべきなのだろう。

「固有種」ではなくとも地域特有の遺伝子の多様性というのは可能な限り残していかないといけないのだろうし、分類という人間都合の線引きで 貴重/そうでない と区分してしまっているとやはり何かを見失う。だからそんな言葉に惑わされないようにしていたいとは思うのだけども。
「屋久島の魅力を一言で」
みたいに単純化を求められると 難しいね。

 

 

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